これでわかる!健康診断の結果を読み解こう

2016/05/24 掲載

大人になると、恐らく一度は受けたことがある「健康診断」

毎年しっかり受診している人もいれば、数年に一度という人もいると思いますが、健康診断の結果を見るときは通知表を見るように、なぜかドキドキしませんか?

でも、健康診断の本来の目的は「生活習慣を振り返り、改善するきっかけにする」と「病気を早期発見し、早期治療につなげる」です。
健康診断でA判定でないことは、悪いことではなく、生活習慣を変えることで改善できたり、病気を早期に発見し、治療ができれば、より健康的な暮らしを送ることができるのです。

一番良くないのは、ただ受けているだけで結果をしっかり見ないこと。結果をしっかり理解してこそ、健康診断を受ける意義があるのです。

今回は、一般的な健康診断で評価される11項目について、詳しく解説していきます。

 

 

BMI(Body  Math  Index・体格指数)

項目 基準値

内容

BMI
(体格指数:Body Math Index)
18.5~24.9

世界共通の肥満度の指標。
BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))の計算式より求められます

 

18.5未満で「やせ」、 25以上で「肥満」。
高血圧や脂質異常症などの有病率が最も低くなる値がBMI22とされており、この値を基準として標準体重が算出されます。しかし、BMIが標準でも体脂肪率の高い「隠れ肥満」の場合は注意が必要です。

体重だけでなく、体脂肪や筋肉量を測定できる体組成計で、日々自分の体をチェックしましょう!

血圧

項目

基準値 内容
収縮期血圧

拡張期血圧
139mmHg以下

89mmHg以下

心臓のポンプ作用によって全身に血液が送り出されるとき、血管に与える圧力のこと。
心臓が血液を動脈に送り出す圧力を「収縮期血圧(最高血圧)」、
心臓が元に戻り血液をためる間の圧力を「拡張期血圧(最低血圧)」といいます。

 

血圧の目標値は診察室では140/90mmHg未満、家庭では135/85mmHg未満。
高血圧の状態が長く続くと、血管に高い圧力がかかったままになり、血管壁がもろくなり様々な障害が生じます。高血圧は脳梗塞や心筋梗塞の最も重要な危険因子の一つです。

血圧は1日の中でも変動が激しいため、決まった時間に測定をする習慣を持つことがこれらの病気を予防する上でとても重要になります。

コレステロール

項目 基準値 内容
LDLコレステロール 60~119mg/dl

細胞膜やホルモン、胆汁酸などの材料になるコレステロール。
体ににとって重要な役割を果たしていますが、その内容と量が重要です。

LDLコレステロールの正式名称は低比重リポタンパク。肝臓で作られ、全身にコレステロールを運ぶ役割があります。

 

血液中に増えすぎると血管壁に蓄積され、動脈硬化の直接的な原因となるため、悪玉コレステロールとも呼ばれています。
女性は閉経をむかえることで女性ホルモンの1つであるエストロゲンが減少し、LDLコレステロールが上昇しやすくなります。

HDLコレステロール 40~119mg/dl

HDLコレステロールの正式名称は高比重リポタンパク。血管壁にたまったコレステロールを回収し、肝臓まで運ぶ役割があります。

 

つまり、動脈硬化を予防するはたらきが強いため、善玉コレステロールとも呼ばれています。
HDLコレステロールが40mg/dL未満だと、脂質異常症(低HDLコレステロール血症)と診断されます。
肥満や中性脂肪の増加はHDLコレステロールを低くし、逆に中性脂肪が減るとHDLコレステロール値が高くなるというシーソー的な現象がみられます。

 

高値:インスリン、エストロゲン、高脂血症用薬の使用、アルコール飲用、運動など
低値:脳梗塞、肝動脈硬化症、肥満、糖尿病、甲状腺機能異常、喫煙、血糖降下薬、降圧剤の使用、 高糖質食、高リノール酸食など

中性脂肪(TG・トリグリセリド)

項目 基準値

内容

中性脂肪
(TG:トリグリセリド)
30~149mg/dl

体を動かすエネルギー源として重要な脂肪の一種です。ただ、運動不足や食べ過ぎ、飲みすぎなどにより過剰になると皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられ、肥満や脂肪肝の原因となります。

 

血中に中性脂肪が増えると、血管壁に入り込みやすい小型LDL(超悪玉)コレステロールをつくりやすくし、HDLコレステロールを減らしてしまうため、動脈硬化を促進させてしまいます。
また、食事の影響により数値が大きく変動するため、空腹時に採血する必要があります。

 

高値:肥満、糖尿病、甲状腺機能異常、脳血栓、痛風、飢餓、降圧薬、抗狭心症薬の使用、菓子やジュース、果物の過剰摂取、夕食や夜食の摂りすぎ、油脂の過剰摂取、多量飲酒など

血糖

項目 基準値 内容
空腹時血糖 70~109mg/dl

血液中にあるブドウ糖の量を示します。
通常は食事をすると血糖値が上昇し、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって血糖値が下がっていきます。


糖尿病になるとインスリンが不足したり作用が低下するため、血糖値が下がりにくくなります。
つまり、空腹時血糖が高い場合は糖尿病が強く疑われます。
しかし、空腹時血糖は前日などの食事が影響しやすいため、HbA1c(過去1、2ヶ月の平均的な血糖値の評価)と合わせてみることをおすすめします。

 

高値:糖尿病、甲状腺機能異常、飢餓、ストレス、食後、運動後など
低値:インスリン分泌過剰、アルコール性低血糖など

肝機能

項目

基準値 内容
AST(GOT)
0~30U/L
肝機能の重要な指標で、肝細胞の障害に伴い数値が変動します。
ただし、ASTは心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに多く存在する酵素のため、これらの臓器・細胞に異変が起こると血液中のAST量が増加します。
そのため、肝臓障害、心筋梗塞、溶血などの診断に有効な検査となっています。
 
肝臓の機能は非常に複雑で、新陳代謝の中心的な役割を果たしますが、病気にかかっても無自覚のまま症状が進む場合が多く「沈黙の臓器」と呼ばれています。
人体で唯一、再生可能な臓器ですが、一度壊れると元の状態に戻すのに時間がかかります。
自覚症状が出る前に検査を受け、疾患を早期に発見することが大切です。
 
ASTのみ高値:心筋梗塞、多発性筋炎、横紋筋融解、溶血性貧血
ALTよりASTが高値:急性肝炎(初期)、肝硬変、アルコール性脂肪肝など
ALT(GPT)
0~30U/L
肝臓に特化して存在する酵素。
とくに肝細胞の変性や壊死に鋭敏に反応するので、肝臓・胆道系の病気の診断に有効な検査となっています。
 
ALTのみ高値:急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変
ASTよりALTが高値:慢性肝炎、脂肪肝、急性肝炎(後期)など
γ-GTP 0~50U/L

肝臓の解毒作用に関わる酵素。
主にアルコールや薬物により肝細胞が壊されることで数値が上昇するため、アルコール性肝障害や薬物性肝障害の診断の際に有効となります。

また、胆汁の流れが悪くなる閉塞性黄疸でも数値が高くなり、なかでも、γ-GTPはアルコールに敏感に反応します。特にアルコールで肝臓が障害されると、ALPやLAPなどほかの胆道系酵素よりも早く異常値を示すので、スクリーニング(ふるいわけ)としてよく使用されます。

高値:飲酒、肥満、肝疾患、胆汁うっ滞、長期ステロイド剤服用など

血液

項目 基準値 内容
ヘモグロビン
男性
13.1~16.6g/dl

女性
12.1~14.6g/dl

赤血球中に含まれる蛋白質の一種で、貧血状態を判断する指標
全身の組織に酸素を運び、二酸化炭素を回収する役割を担っています。

 

血色素と言われるように、血の赤さのもとになっており、貧血になると顔色が悪くなるのはヘモグロビン不足によるものです。
貧血になると酸素を運ぶ能力が落ちるため、動悸や息切れ、めまい、疲労感などの酸欠症状がでてしまいますが、あまり自覚症状がない場合も多いので注意が必要です。


貧血の約7割は鉄不足による鉄欠乏性貧血。無理なダイエットや偏食などによる若い女性の貧血が増えています。

高値:多血症
低値:貧血、腎性貧血、癌、白血病、出血など

腎機能

項目

基準値

内容
クレアチニン
男性
1.0mg/dl以下
女性
0.7mg/dl以下

筋肉内で蛋白質がエネルギーとして使われたあとの老廃物で、腎機能の指標となります。
腎臓が正常に働いている時は十分に排泄されますが、障害がおこると排泄が滞り、血液中に増えるため高値となります。


腎臓に関する病気は、かなり進行しないと自覚症状があらわれないのが特徴で、悪化すると人工透析や腎移植が必要となります。

最近では、高血圧や糖尿病などを起因とした腎硬化症や糖尿病性腎症などが増加しているため、元になる病気がある人は特に注意が必要です。

高値:糸球体腎炎、脱水、筋力運動など
低値:肝障害、甲状腺疾患、尿崩症など

 

 

(参考文献)

◆健診のしおり がん研有明病院 健診センター

◆健診結果で気になることありませんか?  TANITA

◆検査値に基づいた栄養指導  足立香代子  (株)チーム医療

※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。