こんなにあるウォーキングの効果
2012/03/29 掲載
季節を感じながら爽やかに楽しく消費エネルギーUPと筋肉保持を図りたいですね。ただ、これまでとりたてて何か運動をしてきたわけでもない方がいきなり何か新しく特別な運動を始めるというのはなかなか難しいですよね。
そこで、今回はいつでもどこでも誰でもできる「ウォーキング」の特集です。
簡単すぎてあまり深く考えたことが無いかもしれませんが、歩くことって人間の基本動作ですから
実はとってもたくさんの「効果」があるんです。お気楽にできるけどその効果や生活に与える影響は「深い」のですよー!!
歩くって実は大変な動作
歩くことにどれだけの筋肉が使われるか知っていますか?脚の筋肉だけでも大腿四頭筋(大腿直筋・広筋)、大腿二頭筋、前脛骨筋、下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)・・・と大きな筋肉をいくつもいっぺんに使い、同時に腰の筋肉や腹筋や、腕の筋肉だって使っています。重力に耐えて左右の脚で片方ずつ交互に体重を支え、更に脚を曲げ伸ばしして重い身体全体を移動させ自分の行きたい方へと運んでいるのですから大仕事です。重心移動のバランスをとるだけでも大変です。普段何気なく行っている「歩く」という動作、実は全身の筋肉や神経を総動員して行う大変な動きなのです。
犬も歩けば棒に当たる・・・ヒトも歩けば脂肪燃焼
歩くことがいかに高度な動作なのかお分かりいただけたかと思いますが、大きな筋肉をたくさん使い神経も総動員しますから当然エネルギーもたくさん使います。しかも、自分のペースで呼吸しながら脂肪燃焼に必要な酸素を十分摂取できる有酸素運動ですので、エネルギーの「原料」として「体脂肪」を使いやすいのです。(十分に酸素を取り込むことのできないキツい運動や激しい動きの時は、酸素が無くてもすぐにエネルギーを放出できるグリコーゲンなどの糖質が使われます。)
ですから、「体脂肪」を効率よく消費したい人に適した、ダイエットにも有効な運動と言えます。図1をご覧ください。特別な食事制限を行わず、「できるだけよく歩く」ことだけを目標にして2週間の調査を行った結果なのですが、「1日の平均歩数」の多い人ほど「体脂肪」が減少する傾向が統計的にも有意に出ています。歩くことが脂肪燃焼に効果的なことがよくわかりますよね。
歩行で体脂肪が燃焼→健康診断の結果も改善へ
みなさん自分の健康診断の結果って覚えてますか?メタボが気になる人などけっこう細かく見ている方も中にはいらっしゃるかと思いますが、大半の方は特に異常が無い限りそんなに結果を注意して見ていないのではないでしょうか。でも30代を過ぎれば、コレステロールやトリグリセライド(中性脂肪)などの血中脂質はじわじわと血管にダメージを与え始めます。自覚症状は全く無くても、年齢とともに自分では気づかない血中脂質の過剰や糖代謝の乱れによる血管の炎症は進み、どうしても動脈硬化や肝機能障害、糖代謝異常のリスクは高くなってきてしまいます。しかし!そういったリスクの高まりもウォーキングで改善が期待できるのです。
図2、3をご覧ください。
ちょっとややこしい記号と数値が並んだ表ですが、図2は血中のコレステロールやトリグリセライドは「体脂肪蓄積」との関係が強いことを示し、図3は血中脂質(TC,TG)だけでなく血圧や肝機能(GOT,GPT,γGTP)・糖代謝(HbA1c)の指標も内臓脂肪蓄積との関係が見られることを示しています(*マークがついていれば統計的に相関関係がある、ということ)。
前の章で歩数と「体脂肪減少」との相関関係データを示しましたが、ウォーキングで身体に蓄積した脂肪を効率よく燃焼させれば、その体脂肪・内臓脂肪との関係が強い血中脂質や血圧、糖代謝、肝機能の指標を改善させることにもつながる・・・ということなのです。たとえ健康診断結果を覚えていなくても(笑)ちょっとやる気が沸いてきませんか?
メンタルヘルスへの効果や老化防止にも!
健診結果との関連にとどまらずウォーキングの効果については様々な研究結果が発表されています。主に中高年者での調査ですが、ウォーキングは、「うつ病」「認知症」予防にも効果的とされ1)2)3)、特にメンタルヘルス分野での効果も注目されています。
更に「骨粗鬆症」、「筋減少」などの老化予防や、「動脈硬化」「メタボリックシンドローム」の予防などにも効果が見られており1)厚生労働省のメタボリックシンドローム対策として出されている運動指針の中でも、「速歩」が薦められています。
簡単だからと侮ってはいけません!こんなにたくさんの効果が実証されているんです。歩行と健康に関しては世界中の多くの研究機関で研究が継続されていますから更なる効果も発表されるかもしれません。「歩く」って「深い」んです(^^)。
目標「1万歩」って・・・?
ところで、「歩くぞ!」と決意したとして・・・歩数の目標として「1万歩」ってよく言われますよね。キリもいいですし、図1で紹介したデータでも、統計的には1日の平均歩数9000~1万歩程度が2週間で1kg脂肪を減少させる平均的なラインとなっています(食事内容など歩数以外の要素によっても条件は異なりますので一概には言えませんが)。
よく歩くお仕事の方なら割と簡単に超えてしまう値ですが、まとまった時間歩く機会の少ないデスクワーク中心の方にとっては「1万歩」というとちょっとハードルが高いイメージですよね。実際、この「1万歩」を歩くために時間としてはどれくらい必要なのでしょうか。歩行ピッチの実験データを元に試算してみました。
通常、一般的な成人の歩行ピッチは、個人差はありますが大体100歩/1分くらい(タニタ社内実験データより)ですから、10,000÷100=100分・・・つまり大体1時間40分くらいになります。デスクワーク中心の方でも朝の通勤で20分、お昼休みにランチへの往復10分、帰宅に20分歩けばもうほぼ1時間ですから、あとは40分以上ちょっと買い物でもして歩けば達成できてしまうんです。毎日買い物ってわけにも行かないかもしれませんが、見て回るだけのウィンドウショッピングでも良いですし、1駅手前で降りてもいいですし、時間のある時に「何かをしながら40分」歩くようにすれば日常歩行を含めて大体1万歩近く行くのではないでしょうか。どうですか、そう考えるとそう高いハードルでもないと思いませんか?「買い物」なんて私は簡単に1時間超えてしまいますから(^^;)。
成果を数値化してやる気アップ!
さてさて・・「少し歩いてみるか!」って気になっていただけたでしょうか?ウエアとシューズを揃えてかっこよくバッチリ気合の入ったウォーキングをするも良し、お気楽にふらっとお買い物やお散歩がてら遠回りしながら歩いてみるのも良し・・・。
でもせっかく歩いた「成果」は数値で見えた方がぜーったいに楽しいですから、歩数計を付けて出ることを強力にお勧めさせていただきます(記録が残るともっと意欲が沸きますので「からだカルテ」の歩数計なんて最適ですよ)!歩数だけでなく自分の身体にまで効果が表れだすと「おおっ!」と更に嬉しさ楽しさ100倍ですから、一緒に体組成の測定や、できれば検診結果のチェックをすることも超強力オススメです(^^)。
今回のウォーキングの効果について資料をまとめつつ、いまひとつ体型に締まりの無い私もちょっと頑張ってみるか!と決意しました。皆さん、一緒にがんばりましょうー!!
レッツ☆ウォーキング!ですよ。
脚注1)青柳幸利(東京都老人総合研究所)著:「身体活動計を用いた新しい健康づくり
~群馬県中之条町での取り組み~」より
2)熊谷秋三(九州大学健康科学センター)ら:「身体活動と心理的健康・メンタルヘルスとの関連性に関する疫学」.
健康医学 2003, 25:11-20.
3)Inactivity link to mental decline:BBC NEWS. Health : http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/7130450.stm