タニタ食堂でも行っている、美味しい減塩のコツ
2017/02/14 掲載
スーパーやコンビニエンスストアでは、「減塩」や「低塩」、「塩分控えめ」などの商品を多く見かけるようになり、その種類も豊富になっています。
このような商品の普及によって、減塩に取り組みやすい環境になっていますが、他にも塩分を減らす工夫には様々な方法があります。気付かない間に高血圧になっていた!とならないために、食生活を見直してみましょう。今回はタニタ食堂で実際に行っている減塩のポイントもご紹介します。
塩分をとりすぎるとどうなるの?
塩分の多い食事をすると、のどが渇きます。これは、私たちのからだに備わっている血液の濃度を一定に保とうとする作用によるものです。濃くなった塩分を薄めようとして水分をとると血液の量が増え、通常よりも強い圧力で血液が流れ、血管の内側にかかる血圧が上がります。その圧力に耐えようとして血管壁は厚く硬くなり、動脈硬化を進行させてしまうのです。
高血圧は自覚症状がないことが多いので、手遅れにならないうちに減塩生活を意識して出来ることから取り組みましょう。
塩分の多い料理は食べ過ぎる?
例えば、チャーハンや炊き込みご飯、カレーなどの味付けの濃いメニューを食べたとき、「もう一口、もう一口」とついついおかわりしてしまうという経験はないでしょうか。
塩分が多い料理は自然と箸がすすむため、食べ過ぎてしまいがちです。食べ過ぎればもちろん肥満の原因ともなります。「内臓脂肪が気になる」「いつも食べ過ぎてしまう!」という方は、濃い味付けが原因かもしれません。「血圧の値は正常でも体重や体脂肪が気になる」という方にも、日頃より塩分を意識することをおすすめします。
どのくらい減らせばいいの?
厚生労働省の定める塩分摂取量の目標値は男性8.0g未満、女性7.0g未満です。(※1)
2016年11月に発表された「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、2015年における成人の一日あたりの塩分平均摂取量は男性で11.0g、女性で9.2gでした。(※2)
日本人の食塩摂取量は年々減る傾向にありますが、まだまだ目標値からはオーバーしているのが現状です。(表1)
表1
日本高血圧学会「2.食塩の知識-減塩について」より一部改変して作図 (作図:タニタ)
男性はあと3g、女性はあと2.2gを減らすことを目指しましょう。さらに日本高血圧学会では、高血圧患者の食塩摂取量目標値を1日6g未満と掲げていますから、高血圧の方はさらに塩分を減らす必要があります。
タニタ食堂ではどんな工夫をしているの?
タニタ食堂では、厚生労働省が提唱している成人の1日の塩分摂取量の3分の1を目安に、1定食あたりの塩分量を3g以下に抑えています。そのため、特に旬の素材のおいしさや、うま味・だし・スパイスなどを活用し、薄めの味付けでも満足していただけるように工夫をしています。その中からいくつかポイントやおすすめメニューをご紹介します。レシピに関しては、「タニタ社員食堂レシピ」に掲載しています。レシピが気になる方は是非、登録して内容をご確認ください!
1 だしやうま味の出る食材を活用する
うま味を含む食材を使って調理することや、料理の基本であるだしをしっかりとり、だしのうま味をいかした調理をしています。
タニタ食堂では毎食汁物が付きますが、その塩分は1g以下です。みそ汁の塩分は一般的に1.5g程度ですから、汁物だけでも0.5g塩分を減らしたレシピになっています。
タニタ食堂の味噌汁は、だしのうま味が効いているため美味しく感じられますし、残さずに1杯飲んでしまっても安心で、満腹感も高められます。
おすすめ汁物レシピ
トマトのみそ汁 |
トマトの酸味が意外なほどみそ汁によく合います!
|
切り干し大根と桜えびの煮物 |
干した桜えびの香ばしい香りが漂います。
|
2 酸味、甘味、辛味などを活かした味付け、香味野菜や香辛料を上手に使う
塩分を含む調味料は控えめにし、酸味・甘味・辛味がポイントになるような味付けをすることや、香りの良い野菜や薬味、スパイスなどを活用することで味付けのアクセントとなり、美味しさにつながるため、満足感が高まります。お酢やレモン汁、黒酢、バルサミコ酢、大葉、しょうが、ねぎ、にんにくなどがおすすめです。
おすすめ主菜レシピ
ささみの衣揚げレモンあん |
レモンの酸味が効いたソースがささみと良く合います。
|
鶏肉のバルサミコ煮込み |
バルサミコ酢の酸味とコクで塩分が少なめでも美味しく召し上がれます。
|
3 加工品、塩蔵品は調味料替わりに使用する
練り製品などの加工品や塩蔵品は一般的に日持ちを良くするために塩分が多くなっています。タニタ食堂では定食スタイルの提供ですが、漬け物は付いていません。もともと塩分が多い食品を使用する場合は、細かく刻んで野菜と和えるなどの工夫をして、調味料替わりに使用しています。
おすすめ副菜レシピ
ちくわとごぼうの炒り煮 |
ちくわは輪切りにして煮ることで、 味がなじみやすくなります。
|
根菜の海苔ごま和え |
和え衣にのりのつくだ煮を加える簡単レシピです。
|
4 主食は「ごはん」には理由が
ごはんはパンや麺に比べて良く噛んで食べるため早食い防止につながる、腹もちが良いというメリットがありますが、もう一つ、塩分が含まれていないというメリットがあります。主食の塩分量を比較してみると、パンや麺類のほとんどが塩分を含んでいます。(表2)
表2
目安 | 塩分量 | |
ご飯 | 茶碗軽く1杯 100g | 0.0g |
炊き込みご飯 | 茶碗軽く1杯 100g | 1.0g |
寿司飯(具なし) | 茶碗軽く1杯 100g | 1.0g |
食パン | 6枚切り 1枚 | 0.9g |
ロールパン | 2個 60g | 0.7g |
クロワッサン | 1個 45g | 0.5g |
うどん(茹で) | 1食 270g | 0.8g |
そば(茹で) | 1食 170g | 0.0g |
スパゲティ(茹で) | 1食 200g | 0.8g |
中華めん(生) | 1食 230g | 0.5g |
文部科学省 日本食品標準成分表 2015年(七訂)より抜粋
ごはんは味が付いていませんが、良く噛むとごはんの甘みを感じることができますから、おかずの塩分にも注意すれば、減塩に役立ちます。
5 ドレッシングの使い分け
ノンオイルなどの低カロリードレッシングが種類豊富に販売されていますが、中には塩分が多いものもあります。
表示を見て塩分量を把握する必要がありますが、タニタ食堂では、塩分の比較的少ないオイル系や乳化したタイプのドレッシングを使うこともあります。塩分が少なくてもオイルのコクが美味しさにつながります。お肉の部位などの素材選びや油を使う調理を減らすなどの工夫をして、ある程度カロリーをコントロールすることで、ドレッシングやオイルの使い方の幅が広がります。
ちなみに、タニタ食堂の食卓には、しょうゆやソース、ドレッシングなどの調味料はありません。サラダなどはあらかじめ味付けした状態で提供し、ソースなども一人分をかけてから提供しています。食卓に調味料が置いてあると習慣でつい使ってしまいますから、なるべく必要な時だけ使うようにしましょう。
6 塩分の少ないレシピを貯えておく
もし、外食などで濃い味付けの食事をとってしまったら、その後の食事ではなるべく塩分を控えめにしたいものです。野菜に含まれるカリウムが塩分の排泄を助けてくれるので、野菜たっぷりのレシピを取り入れることも大切です。また、副菜の1品をフルーツに置き換える、塩分が0gのレシピを備えておくということもおすすめです。
おすすめ副菜レシピ
さつまいもとりんごの重ね煮 |
仕上げのヨーグルトが甘みを引き立てます。
|
長ねぎのバターホイル焼き |
ねぎは甘くなり、レモン汁の酸味と バターのコクが美味しいレシピです。
|
ご自身でも取り組めそうなことはありましたか?
タニタ食堂の取り組み以外にも、ご自宅や外食の際に塩分を減らすための工夫と、減らせる塩分量(目安)をいくつかあげてみました。(※3)
□みそ汁を具だくさんにして汁を飲む量を2/3に減らす -0.5g
(一般的なみそ汁150ml(塩分およそ1.5g)を、100mlにして具を増やす)
□しょうゆを減塩しょうゆにする 大さじ1杯あたり-1.2g
□とんかつのソースを半分にして、レモン汁をかける 1食あたり-0.5g
(中濃ソース大さじ1杯18gを大さじ1/2 9gにする)
□パンをごはんに変える 1食あたり-0.7g
(パンはロールパン2個を想定)
□カップラーメンの汁を残す 1食あたり-2~5g
□塩鮭(塩分およそ1.8g)ではなく、生鮭を調理して食べる -1.3g
(100g切り身・生鮭には0.3gの塩をふって焼く想定)
□ドレッシングを低塩や減塩に変更する 大さじ1杯およそ-0.6g
(大さじ1杯あたり塩分およそ1.0g→0.4g)
「薄味は物足りない」という方でも、慣れてくると外食の味を濃いと感じたり、素材の味を感じられるようになったりします。
また、「薄味の料理を出しても受け入れてもらえない!」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。お料理を出すときには、「今日はしっかりおだしが効いているよ」「旬の美味しいお魚が手に入ったから」「レモン汁をしぼって食べてみて」など、味わって食べてもらうための一言を添えてあげましょう。作った人の愛情が、美味しい調味料になるかもしれません。
【表の出典】
表1 日本高血圧学会「2.食塩の知識-減塩について」(作図:タニタ)
https://www.jpnsh.jp/general_salt.html
表2 文部科学省 日本食品標準成分表 2015年(七訂)
【参考文献】
※1 厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2015 年版)
※2 厚生労働省 平成27年「国民健康・栄養調査」の結果
※3 文部科学省 日本食品標準成分表 2015年(七訂)