健康寿命を延ばすためには?

2014/11/25 掲載

介護予防 できることは?

健康寿命という言葉をご存知ですか?

健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義されています。簡単に言うと介護を必要とせず、日常生活を不自由なく送ることができる期間のことです。

そして現在では平均寿命と健康寿命の差が男性約9年、女性約13年あります。つまり平均寿命を迎える前の約10年間は入院、介護などを必要としており「不健康な期間」ということができます。不健康な期間はできるだけ短い方が本人、家族にとっても良いことは間違いありません。政府でも健康寿命を延ばし、不健康な期間を短くするという目標を掲げております。

 

【図1】 資料
平均寿命: 厚生労働省大臣官房統計情報部「完全生命表」
健康寿命: 厚生労働科学研究費補助金
「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」

【図2】
ここで介護が必要になった原因(図2)を見てみました。

骨折・転倒、関節疾患など約20%は予防が可能です。
中でも転倒は予防することができる項目です。

 

 

 

 

 

 

転倒する危険性の高い人とは?

高齢になるにつれて転倒が高くなる傾向があり、とくに85歳以上では5人に1人と非常に高い割合で転倒が起きています。そして男性よりも女性で頻度が高くなっています。

また転倒がおきた場所は、庭が最も多く、続いて居間、玄関の順で多くなっています。

おそらく庭仕事をして立ち上がった瞬間にバランスを崩して、石ころ、段差などにつまずいて転倒が起きたということが想像できます。
【図3】内閣府、高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果 H22

さらに高齢者のための転倒におけるガイドラインには身体機能に関する転倒がおきる危険因子(表1)として、11の項目が上がっています。なかでも筋力低下は低下していない人に比べ転倒するリスクが4.4倍も高くなります。加えてバランス障害も生じているなど、1人で危険因子をいくつも持っていることが考えられ、これらの危険因子が複合的に作用すると転倒する危険性が非常に高くなります。

 

【表1:転倒の危険因子】 参考文献3より引用改変

危険因子 オッズ比
筋力低下 4.4
転倒経験 3
歩行障害 2.9
バランス機能 2.9
補助具の使用 2.6
視覚障害 2.5
関節炎 2.4
ADL障害 2.3
抑うつ 2.2
認知障害 1.8
年齢(80歳以上) 1.7

 

転倒予防のためには?

年齢、性別は変えられないので、身体機能から転倒予防を行うしかありません。

たとえば庭で立ち上がるときにふらついてしまった場合、筋力があり、バランス機能が高い人は転倒を免れる、または最小限のケガで済むことができるのではないでしょうか。

実際のデータにおいても転倒経験がある人とない人で下肢筋力を比較したところ、転倒経験のある人は筋力が低くなっています。

立ち上がり時に荷重ピーク値とは、椅子からの立ち上がり動作を行った際の荷重の最大値で、体重の何倍の力を踏み込んで立ち上がっているかを見た値です。この値が高いほど下肢筋力が高いと評価することができ、一部の研究にて使用されています。
【図4】 参考文献4より 引用改変 

筋量、筋力は使用しないと、加速的に衰えていきます。そして残念なことにウォーキングだけでは維持、増加はしません。
筋力アップのためには筋肉に負荷をかける必要があります。だからといって重いものを持ち上げたりすると腰、膝を痛めることになってしまいます。そこでウォーキングの中に数分の早歩き時間を設ける、数十歩を大股で歩くなど変化をつけたウォーキングを行うのはいかがでしょうか。

 

トイレでのスクワット運動もおすすめです。座った状態からゆっくり立ち上がる、または立つ&座る動作を何回か行ってからトイレを出ます。トイレに行く毎に行うことで、1日に数回のスクワット運動を実施したことになります。ちりも積もればなんとやらですね。
そして誰にも邪魔されずこっそりトレーニングを積む(?)ことが可能です。
スクワット運動はロコモティブシンドロームのトレーニングにも推奨されており、非常に有効な運動であると言われております。


自分にあった方法で筋量、筋力を維持・増加させ、転倒を予防し、自分の足で生き生きと歩いていけるよう願っています。

 

 

参考文献

1.厚生労働省,国民生活基礎調査 平成25年
2.内閣府,高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果 平成22年

3.American Geriatrics Societ, British Geriatric Society, American Academy of Orthopaedic Surgeons Panel on Fall                Prevention:Guideline for the prevention of falls in older persons. J Am Geriatr Soc, 2001, 49(5): 664-672.

4.Tsuji T, Kitano N, Soma Y, Tsunoda K, Miyama T, Shiokawa T, Okura T. Evaluation of lower-limb muscle function using a specialized weight scale. The Gerontological Society of America's 65th Annual Scientific Meeting, San Diego, CA, USA, November 14-18, 2012. Poster presentation. 

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