こころの強い子に育てたい!子どものメンタルヘルス
2015/06/09 掲載
最近は大人だけでなく、子どもや若者もメンタルに不調を抱えている人が増えています。
なかなか解決できないと、ひきこもりや不登校などに発展してしまうかもしれません。
平成18年3月末に厚生労働省が行った調査によると、狭義のひきこもり(「ふだんは家にいるが,近所のコンビニなどには出かける」「自室からは出るが,家からは出ない」「自室からほとんど出ない」を合わせたもの)は、全国の約26万世帯(全世帯中の約0.5%に相当)に、文部科学省が行った平成26年度の学校基本調査によると、不登校は小中学校合わせて約12万人(約1.17%=86人に1人)いると推測されています。特に中学校では2.69%=37人に1人が不登校。クラスに1人は不登校と言っても過言ではありません。いつ誰がなってもおかしくないのです。
「うちは子どもと常に話をしているし、大丈夫!」と安心するのは早いかも。
自分で不調に気付いていなかったり、不調に気付いていても、なかなか言葉にできない子もいます。
誰でもこころの不調を感じることはあります。これを上手に乗り越えるには、家族や周りのサポートがとても重要になります。
「こころの強い子に育てたい!」そう願っている親は少なくないはず。今回は、子どものメンタルヘルスに注目してみました。
SOSサインはこんなところに現れる
悩みやストレスが大きくなってくると、多かれ少なかれ、様々なサインが現れます。
特に睡眠、食欲、体調、行動の4つの面に出てくることが多いと言われています。
[睡眠]よく眠れること、十分な睡眠は心の健康にとって大切です。
・布団に入っても中々寝付けない(眠れないという)
・遅くまで夜更かししている。
・朝、起きるのが辛そう、中々起きられない。
・睡眠のリズムがくずれている。
・寝すぎる
[食欲]ストレスやこころの病から食欲に影響が及ぶことがあります。
・食欲がない、食べる量が減った。(急にやせた)
・逆に食べ過ぎる。(急に太った)
・特にパンやごはん、お菓子などの炭水化物を欲しがる。
・体重をとても気にしている。
[体調]こころの病気も、最初は体調に出てくることがよくあります。
・体がだるそう
・疲れている
・元気がない
・顔色が悪い
・腹痛や頭痛、めまい、吐き気などを訴える。
[行動]本人よりも周囲が気づきやすいのが行動面のサインです。
・学校に行きたがらない
・家から出ないでひきこもりがちになった。
・友達と遊ばなくなった。
・身だしなみに構わなくなった。
・無口になった。
・挨拶をしなくなった。
・何度も同じ動作や行動をくりかえす。
・イライラしていて、ちょっとしたことで怒りっぽくなった。
・気持ちが抑えられなくなり、暴力をふるう。
・何もしないで長い間ぼんやりしている
・表情が変わらず、感情面での反応が少なくなった。
・話が支離滅裂になった、通じなくなった。
・独り言を言うようになった。
ここでひとつ注意が必要なのは、これらの症状があるからといって必ずしもSOSでない場合もあります。
ポイントとなるのは、今までなかったのに、これらのサインが見られるようになった場合や、それが長く続く場合、こころのSOSの可能性があります。
早く気付いてあげるためには、子どもの日常の姿をしっかり知っておくことが大切です。
SOS発見!その時にはどうしたら・・・
STEP1:話を聞く
もし、子どものこころのSOSを感じたら、まずは話を聞いてあげましょう。その際のポイントをご紹介します。
1)話してくれない時は無理強いしない
子どものSOSを感じて、不安にならない方はいないと思います。何が原因なのか?いち早く知って解決したいと思う気持ちはよくわかりますが、すぐに話してくれるとは限りません。誰でも自分の弱い部分や不安について、人に話すのに抵抗があり、勇気がいるものです。もしかしたら、親を困らせたくない、心配させたくないという気持ちが強く、なかなか話してくれない子もいるかもしれません。
そのような時は、子どもの気持ちを第一に考え、無理強いしないようにしましょう。
そして、話してくれなくても、諦めず「いつでも聞くからね」と伝え、話しやすい環境づくりをしながら、自分から話してくれるのを待ちましょう。話してくれたら、「辛いことを話してくれてありがとう」とねぎらう姿勢で聞きましょう。
2)聞き役に徹する
子どもが話し始めたら、まずは聞き役に徹します。どんな風に感じ、どんな気持ちでいるのか?子どもの気持ちに共感するとは、子ども自身の感じ方を理解するつもりで聞くことです。そして、気持ちをしっかり受け止める姿勢が大切。
具体的には、心配な気持ちや自分の意見はぐっと我慢して、子どもの言葉を繰り返します。特に「つらい」「悲しい」「不安」など感情を表す言葉は「つらいのね」などと伝え直してあげます。
また、こころの不調はきっとよくなるということや、親や周りの人がついている、あなたは1人ではないから一緒に乗り越えようということを伝えることも大切です。
3)「私」を主語に話をする
聞き役に徹し、子どもの話を聞き終えて、声をかける時は、「あなた」ではなく「私」を主語に話しましょう。
実際に起こっていることに対して、「私」を主語に素直な気持ちを伝えると、相手を責めるのではなく、自分も一緒に考えようとする姿勢が伝わります。
例えば「あなたは最近、学校を休んでばかりね」というよりは「最近、学校をよく休むので、私はあなたのことがとても心配なの」と伝えます。
4)HOWで聞く
何かを聞きたい時「はい」「いいえ」のどちらかで答えなければならない質問や回答を迫る質問は、責められている、強要されていると感じやすいので、「どんなふうに思う?」など答え方が限定されない質問の方が話しやすくなります。「WHY?」ではなく「HOW?」で聞くようにします。例えば「○○についてはどう?」「○○のときは、どんな感じだった?」などのような聞き方です。もし、言葉で伝えきれない場合は、紙に書いてもらってもよいでしょう。
5)しない方がよいこと
<聞くときの態度>
・何かをしながら話を聞く。
・視線を合わせない
・腕組みをする
・先入観をもって聞く、聞く前から結論を決めつける
<感情的になる>
・動揺して大きな声を出す
・怒るなど、感情的に応答する。
・哀れんだり、同情しすぎる。
<尊重しない、否定する>
・無理に話をさせる。
・子どもの言うことを軽視したり、否定する。(「そんなはずはない」「違う」)
・小言を言う、叱る、説教する
・話しを遮って、自分の意見や気持ちを言う
・自分の価値基準で判断する(「何を言ってるんだ、とんでもない!」)
・原因を追及する。(「いったいどうしてなんだ?なぜなんだ?」)
「最近どこか様子が違う」と感じてもそれを真正面から指摘されたら、多感な時期には、益々こころを閉ざして「そんなことない!」と意地を張ってしまうかもしれません。変化や問題を指摘することよりも、一緒に考えようという姿勢が大切です。
6)周囲の人達にも様子を聞いてみる
家族が一番に気付くとは限りません。いつも一緒にいるからこそ、気づきにくいということもあるかもしれません。そのような場合、家族以外の人がサインをキャッチしている場合もあります。近所の人や子どもの友達、友達の両親など、子どもを取り巻くネットワークと日頃からコミュニケーションを深め、相談できる関係を築いていくことも大切です。
STEP2:聞いた話を活かす
話したことの記録をとっておき、必要に応じて、教職員、養護教諭、スクールカウンセラー、専門家などに相談をしましょう。内容によっては「このことは先生に伝えて相談したほうがよいことだから」と説明してから第三者に伝えるようにしましょう。本人が隠したいと思うことはできるだけ秘密にするけれど、健康や安全に関わることについては、秘密にできないこともあるということを伝えましょう。
また、話を聞いて、こころの病院を受診した方がよいと思う場合は、無理強いせず、子どもの気持ちを受け止めながら、受診を促していきます。こころの病気は、早めの治療ほど回復も早いといわれています。
今回は、こころのSOSの初期対応を中心にご紹介しましたが、1人1人状況が違いますので、これがすべてではありません。
大人になっても、ストレスは必ずつきまとうもの。上手に乗り越える方法を一緒に考え、伝えていくことも、親の大切な役目ですね。
(参考文献)
・こころもメンテしよう(厚生労働省) リンクはこちら
・ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン(厚生労働省)
リンクはこちら
・平成26年度 学校基本調査 速報(文部科学省)
リンクはこちら