一生役立つ「栄養素の基礎知識」
2015/11/10 掲載
「健康のために食生活の栄養バランスを整えましょう。」
これは本サイトのコラムを含め、健康情報に関する読み物などでよく目にするフレーズですね。
実際に栄養バランスを整えるためには、一体何種類の栄養素をとる必要があるのでしょうか?
その数、33種類!これは2015年の食事摂取基準として必要量や目安量が設けられているものですが、
今後さらに増える可能性もあるのです。
今回は、人間が生きるためにに必要不可欠な成分、「栄養素」の主要なものについて、わかりやすくご紹介します。
三大栄養素
数ある栄養素の中でも、脳やからだのエネルギー源となったり筋肉や脂肪などの構成成分となる、特に重要な「炭水化物・たんぱく質・脂質」の3つを三大栄養素と言います。
【たんぱく質】
■たんぱく質 摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) | 推奨量(g/日) | 推奨量(g/日) |
15~17 | 65 | 55 |
18~29 | 60 | 50 |
30~49 | 60 | 50 |
50~69 | 60 | 50 |
70以上 | 60 | 50 |
たんぱく質は三大栄養素の一つで、体重の約1/5を占めています。
血液や筋肉などの体をつくる主要な成分であるとともに、酵素やホルモン、神経伝達物質などの生命の維持に欠かせない多くの成分になります。
たんぱく質は多くのアミノ酸が結合した化合物で、人間のからだのたんぱく質を構成するアミノ酸は20種類。これらをバランス良く補給するためにはいろいろな食品をまんべんなく食べることが大切です。
また、たんぱく質は1gあたり4kcalのエネルギー源にもなります。
摂取したたんぱく質が体内で有効に利用されるためには、ビタミンB6の助けを借りることが必要です。
含まれる食品 : 肉類、魚介類、卵、大豆・大豆製品、乳製品
不足すると
体力低下・思考力低下・免疫能低下・貧血などからだ全体の機能低下の原因となります。
とりすぎると
腎臓の負担増加となり、将来の腎臓疾患の原因となることもあります。
【脂質】
■脂質 摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) |
目標量(範囲) (%エネルギー) |
目標量(範囲) (%エネルギー) |
15~17 | 20~30 | 20~30 |
18~29 | 20~30 | 20~30 |
30~49 | 20~30 | 20~30 |
50~69 | 20~30 | 20~30 |
70以上 | 20~30 | 20~30 |
脂質は三大栄養素の一つで、1gあたり9kcalのエネルギーを生み出す主要なエネルギー源になります。
また脂質には体内でつくることができない必須脂肪酸が含まれ、細胞膜やホルモン、からだの仕組みに働きかける生理活性物質の材料になるといった重要な役割があります。
さらに、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・Kなど)の吸収を助ける作用もあります。
摂取した脂質が体内で有効に利用されるためには、ビタミンB2の助けを借りることが必要です。
含まれる食品:油やマヨネーズなどの調味料、洋菓子、肉類、ナッツ類、魚介類
不足すると
発育の障害や、皮ふ炎の原因となることがあります。
とりすぎると
肥満や脂質異常症、メタボリックシンドローム、動脈硬化などといった生活習慣病の原因となります。
【炭水化物】
■炭水化物 摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) |
目標量 (%エネルギー) |
目標量 (%エネルギー) |
15~17 | 50~65 | 50~65 |
18~29 | 50~65 | 50~65 |
30~49 | 50~65 | 50~65 |
50~69 | 50~65 | 50~65 |
70以上 | 50~65 | 50~65 |
炭水化物は三大栄養素の一つで、からだの主要なエネルギー源となります。
消化・吸収される「糖質」と、消化・吸収されない「食物繊維」に分けられますが、 糖質は体内に入ると速やかに消化・吸収され、1gあたり4kcalのエネルギーを生み出すエネルギー源となります。
摂取した炭水化物が体内で有効に利用されるためには、ビタミンB1の助けを借りることが必要です。
含まれる食品 : ごはん・パン・めんなどの穀類、いも類、砂糖類、れんこんやごぼうなどの根菜類
不足すると
疲労感や倦怠感、体脂肪の減少を招きます。長期的には栄養バランスの乱れによるや筋肉量の減少や代謝機能の疾患の原因にもなります。
とりすぎると
肥満や糖尿病、メタボリックシンドローム、動脈硬化などといった生活習慣病の原因となります。
【食物繊維】
■食物繊維 摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) |
目標量(範囲) (g/日) |
目標量(範囲) (g/日) |
15~17 | 19以上 | 17以上 |
18~29 | 20以上 | 18以上 |
30~49 | 20以上 | 18以上 |
50~69 | 20以上 | 18以上 |
70以上 | 19以上 | 17以上 |
含まれる食品 :玄米など未精製の穀類、そば、きのこ、海藻、豆類、根菜類、果物、乾物など
不足すると
便秘の原因となります。また、肥満や糖尿病、心筋梗塞などの生活習慣病のリスクを高めます。
とりすぎると
ミネラル
ミネラルは、生命活動に必須の無機物で、体重の約5%を占めています。
からだの組織をつくる原料でもあり、またからだのさまざなな機能の調整役としても重要な働きをしています。
【ナトリウム(食塩相当量)】
■食塩相当量(ナトリウム)摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) | 目標量(g/日) | 目標量(g/日) |
15~17 | 8未満 | 7未満 |
18~29 | 8未満 | 7未満 |
30~49 | 8未満 | 7未満 |
50~69 | 8未満 | 7未満 |
70以上 | 8未満 | 7未満 |
ナトリウムは、血圧の調節・酸の中和・神経の情報伝達・栄養素の吸収や輸送などに関わっており、生命活動の維持のための重要な栄養素と言えます。
食塩はナトリウム(Na)と塩素(Cl)が結合した塩化ナトリウムのことで、食品中に含まれるナトリウムの量から、次の計算式により食塩相当量を求めることができます。
ナトリウム(mg)×2.54÷1,000=食塩相当量(g)
塩味は食事の美味しさを左右するポイントとなりますが、日本人の食生活では過剰摂取となりやすく、注意が必要です。
不足すると:普段は不足となる心配はありませんが、大量発汗が長時間続いた場合などは体内のナトリウム不足が起こることがあり、めまいやけいれん、また中枢神経系の機能障害など生命の危機をもたらすこともあります。
含まれる食品 :食塩やしょうゆ・みそ・コンソメなどの調味料、ソーセージや干物など肉・魚の加工品、魚卵や海藻などの塩蔵加工品、インスタントの麺類やスナック菓子など
不足すると
通常の食生活では不足することはありません。極端な塩分不足が起きた場合は血圧の低下や倦怠感の原因となります。
とりすぎると
高血圧や胃がんなどの様々な生活習慣病の原因となります。
【カリウム】
■カリウム 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢 | 目安量 | 目標量 | 目安量 | 目標量 |
(歳) | (mg/日) | (mg/日) | (mg/日) | (mg/日) |
15~17 | 2800 | 3000以上 | 2100 | 2600以上 |
18~29 | 2500 | 3000以上 | 2000 | 2600以上 |
30~49 | 2500 | 3000以上 | 2000 | 2600以上 |
50~69 | 2500 | 3000以上 | 2000 | 2600以上 |
70以上 | 2500 | 3000以上 | 2000 | 2600以上 |
カリウムは細胞内液に存在し、細胞の外液に存在するナトリウムとバランスをとりながら、細胞の機能や血圧の調整を支える役割を担っています。またカリウムは、体内の過剰なナトリウムの排泄を助け、血圧を下げる働きがあります。
含まれる食品 :野菜、海藻、きのこ、いも類、果物など
不足すると
血圧が高くなりやすくなります。また、筋肉へのエネルギーがうまく補給されず、筋力の低下や不整脈が起こりやすくなります。
とりすぎると
健康な方の場合は多くとりすぎても排泄されるため心配ありません。腎機能が低下している場合は、胃腸障害や不整脈の原因となることがあります。
【カルシウム】
■カルシウム 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢(歳) |
推奨量 (mg/日) |
耐容上限量 (mg/日) |
推奨量 (mg/日) |
耐容上限量 (mg/日) |
15~17 | 800 | - | 650 | - |
18~29 | 800 | 2500 | 650 | 2500 |
30~49 | 650 | 2500 | 650 | 2500 |
50~69 | 700 | 2500 | 650 | 2500 |
70以上 | 700 | 2500 | 650 | 2500 |
体内のカルシウムは99%が骨と歯に貯蔵され、これらを丈夫に保っています。 残りの1%は血液や筋肉などの組織の中にあり、神経の働きや筋肉運動、成長ホルモンなどさまざまなホルモン分泌、出血を止めるなど、生命の維持や活動に関わっています。
含まれる食品:乳製品、魚介類、小松菜やほうれん草などの青菜、大豆製品
不足すると
成長期に不足すると骨や歯の成長障害の原因になります。またそれ以降に長期間不足の状態が続くと高齢期に骨粗しょう症の一因となります。その他、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病にもつながります。
とりすぎると
通常の食生活で過剰となることはまずありませんが、過剰摂取が長く続くと、尿路結石などが起こる場合があります。
【鉄】
■鉄 摂取基準
男性 | 女性 | ||||
年齢 | 推奨量 | 耐容上限量 | 推奨量(mg/日) | 耐容上限量 | |
(歳) | (mg/日) | (mg/日) | 月経なし | 月経あり | (mg/日) |
15~17 | 9.5 | 50 | 7 | 11 | 40 |
18~29 | 7 | 50 | 6 | 10.5 | 40 |
30~49 | 7.5 | 55 | 6.5 | 10.5 | 40 |
50~69 | 7.5 | 50 | 6.5 | 10.5 | 40 |
70以上 | 7 | 50 | 6 | 40 |
体内の鉄の大部分は、赤血球の成分ヘモグロビンの材料となります。ヘモグロビンは、呼吸でとり込んだ酸素と結びつき、酸素を肺から体のすみずみまで運ぶという重要な働きをしています。
含まれる食品:レバーや赤身の肉類、貝類、野菜、大豆製品、海藻類
不足すると
鉄は肝臓や脾臓などに貯蔵されていますが、長期間の摂取不足や出血等で貯蔵鉄が使い果たされた場合は貧血になります。
とりすぎると
吸収率が低く、体内には必要以上に吸収されないしくみも備わっていますが、サプリメントなどで過剰にとり続けると、嘔吐などの胃腸症状を起こすことがあります。
【亜鉛】
■亜鉛 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢(歳) |
推奨量 (mg/日) |
耐容上限量 (mg/日) |
推奨量 (mg/日) |
耐容上限量 (mg/日) |
15~17 | 10 | - | 8 | - |
18~29 | 10 | 40 | 8 | 35 |
30~49 | 10 | 45 | 8 | 35 |
50~69 | 10 | 45 | 8 | 35 |
70以上 | 9 | 40 | 7 | 35 |
亜鉛は味覚を正常に保つのに働き、また皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です。また、亜鉛は200種類以上の酵素の構成成分であり、細胞の生まれ変わりやたんぱく質の合成にもかかわっています。
含まれる食品:牡蠣、肉類、大豆製品
不足すると
味覚障害や皮膚炎、免疫力の低下の原因となります。また成長期に不足すると、身長や体重、性的な発達も遅れます。その他、成人男性では性機能不全、妊婦では胎児の成長不良を招く要因となります。
とりすぎると
食事からの過剰摂取の害の例はありませんが、サプリメントなどで亜鉛を継続的にの多量摂取した場合、銅や鉄の吸収が阻害され貧血になることがあります。
ビタミン
ビタミンは生命活動に必須の有機物です。わずかな量で、分解・合成・代謝など、からだのさまざまな機能を調整しサポートしています。 ビタミンは、水に溶けやすい「水溶性ビタミン」(ビタミンB群・C)と、水に溶けにくく油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」(ビタミンA・D・E・K)に分けられます。 水溶性ビタミンは多く摂取しても尿中に排泄されやすく過剰摂取の心配はあまりありませんが、脂溶性ビタミンは体内に蓄積されやすいため、過剰摂取とならないよう注意が必要です。
【ビタミンA】
■ビタミンA 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢(歳) |
推奨量 (μgRAE/日) |
耐容上限量 (μgRAE/日) |
推奨量 (μgRAE/日) |
耐容上限量 (μgRAE/日) |
15~17 | 900 | 2600 | 650 | 2600 |
18~29 | 850 | 2700 | 650 | 2700 |
30~49 | 900 | 2700 | 700 | 2700 |
50~69 | 850 | 2700 | 700 | 2700 |
70以上 | 800 | 2700 | 650 | 2700 |
【ビタミンB1】
■ビタミンB1 摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) | 推奨量(mg/日) | 推奨量(mg/日) |
15~17 | 1.5 | 1.2 |
18~29 | 1.4 | 1.1 |
30~49 | 1.4 | 1.1 |
50~69 | 1.3 | 1 |
70以上 | 1.2 | 0.9 |
【ビタミンB2】
■ビタミンB2 摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) | 推奨量(mg/日) | 推奨量(mg/日) |
15~17 | 1.7 | 1.4 |
18~29 | 1.6 | 1.2 |
30~49 | 1.6 | 1.2 |
50~69 | 1.5 | 1.1 |
70以上 | 1.3 | 1.1 |
ビタミンB2は糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝をサポートし、生体内の様々な機能に関与していますが、
【ビタミンB6】
■ビタミンB6 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢 | 推奨量 | 耐容上限量 | 推奨量 | 耐容上限量 |
(歳) | (mg/日) | (mg/日) | (mg/日) | (mg/日) |
15~17 | 1.5 | 50 | 1.3 | 45 |
18~29 | 1.4 | 55 | 1.2 | 45 |
30~49 | 1.4 | 60 | 1.2 | 45 |
50~69 | 1.4 | 55 | 1.2 | 45 |
70以上 | 1.4 | 50 | 1.2 | 40 |
【ビタミンC】
■ビタミンC 摂取基準
男性 | 女性 | |
年齢(歳) |
推奨量 (mg/日) |
推奨量 (mg/日) |
15~17 | 100 | 100 |
18~29 | 100 | 100 |
30~49 | 100 | 100 |
50~69 | 100 | 100 |
70以上 | 100 | 100 |
【ビタミンD】
■ビタミンD 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢 | 目安量 | 耐容上限量 | 目安量 | 耐容上限量 |
(歳) | (μg/日) | (μg/日) | (μg/日) | (μg/日) |
15~17 | 6 | 90 | 6 | 90 |
18~29 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
30~49 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
50~69 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
70以上 | 5.5 | 100 | 5.5 | 100 |
【ビタミンE】
■ビタミンE 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢 | 目安量 | 耐容上限量 | 目安量 | 耐容上限量 |
(歳) | (mg/日) | (mg/日) | (mg/日) | (mg/日) |
15~17 | 7.5 | 750 | 6 | 650 |
18~29 | 6.5 | 800 | 6 | 650 |
30~49 | 6.5 | 900 | 6 | 700 |
50~69 | 6.5 | 850 | 6 | 700 |
70以上 | 6.5 | 750 | 6 | 650 |
【葉酸】
■葉酸 摂取基準
男性 | 女性 | |||
年齢(歳) |
推奨量 (μg/日) |
耐容上限量 (μg/日) |
推奨量 (μg/日) |
耐容上限量 (mg/日) |
15~17 | 250 | 900 | 250 | 900 |
18~29 | 240 | 900 | 240 | 900 |
30~49 | 240 | 1000 | 240 | 1000 |
50~69 | 240 | 1000 | 240 | 1000 |
70以上 | 240 | 900 | 240 | 900 |
参考文献:
日本人の食事摂取基準(2015年版)概要 厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000056112.html
あたらしい栄養学 吉田企世子、松田早苗著 高橋書店
食品成分最新ガイド 栄養素の通になる 上西一弘著 女子栄養大学出版部