あなたは肝臓にとってブラック企業になっていませんか?

2017/07/25 掲載

働きすぎて疲れたサラリーマン(イメージ)

私たちはからだの経営者です

過多な残業や休日出勤の結果、健康障害のリスクが高まることは周知されています。そのリスクを解消するため、平成29年3月に発表された「働き方改革実行計画」でも罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正が盛り込まれました。

 


健康な従業員が増えることは働く意欲や能力アップが期待され、企業が成長する上でも従業員の健康管理は必要不可欠です。


自分のからだに置き換えてみると、私たちも自身のからだをマネジメントする個人経営者だと言えます。経営者にとって従業員であるからだの臓器や器官の健康管理は義務といっても過言ではありません。


からだにとってのいわゆる労働基準法は、健康を保ち、病気を予防するために栄養素及び食品の摂取量や運動量、休養の目安が示されている、日本人の食事摂取基準健康日本21食生活指針などです。

この目安の中で、今回は「アルコール」にフォーカスしたいと思います。


 

アルコールにより肝臓は連日長時間労働を課せられている!

 

飲み過ぎは肝臓の時間外労働です

肝臓の業務の一つにアルコールや薬、老廃物などからだにとって有害な物質を分解し、無毒化する「解毒」という重要な作業があります。この作業が増えれば肝臓は過重労働の状態となり、疲労することでいろいろな肝障害が起こります。


では、アルコールを飲むことで、肝臓にどれくらい負担をかけることになるのか、考えてみたいと思います。


からだに入ってきたアルコールは肝臓で処理されるほか、呼気や尿、汗としてアルコールのまま排泄されます。アルコールのまま排泄される量は10%以上になることはないので、体内のアルコールの90%以上が肝臓で処理されることになります。


体重60kgの人がビール中瓶1本のアルコールを処理するのにかかる時間は3~4時間といわれています。このことから、体重1kgあたり1時間に処理できるアルコール量は多くても0.1gです。
ただし、体質や性別、体調、一緒に摂る食事によっても処理時間には差があります。


では、実際にご自身が飲んだお酒が肝臓で処理される時間を計算してみましょう。


 

ステップ1:飲んだお酒の純アルコール量を計算する

お酒はその種類によってアルコール濃度が異なります。飲んだお酒の量とアルコール度数を基に純アルコール量を算出します。

純アルコール量(g)=お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8(アルコールの比重)

例)ビール中瓶1本(500ml、アルコール度数5%)

500×[5÷100]×0.8=20

→ ビール中瓶1本には20gの純アルコールが含まれる


ステップ2:肝臓でアルコールが処理される時間を計算する

摂取した純アルコールの90%が肝臓で処理されると仮定し、体重1kgあたり1時間に処理できるアルコール量が0.1gを基に飲んだお酒の処理にかかる時間を算出します。

アルコールの処理時間(時間)=純アルコール量(g)×[処理割合(%)÷100]÷[体重(kg)×0.1(g/時間)]

例)体重60kgの人がビール中瓶1本(純アルコール20g)を飲んだ場合

20×[90÷100]÷[60×0.1]=3

→ 体重60kgの人はビール中瓶1本に含まれるアルコールを処理するのに3時間かかる

二日酔い(イメージ)

上記の例で体重60kgの人が宴会でビールを中ジョッキで5杯飲んだとすると、アルコールの処理で肝臓は、なんと!?15時間連続勤務となります。

また、肝臓がアルコールを処理している間は他の業務はストップされるので、お酒と一緒に食べたものの消化は後回しとなってしまいます。寝ている間も肝臓は働いているわけですから、飲み過ぎた翌朝に消化不良で胃もたれや疲労感が残っているのも当然です。

 

それだけでなく、アルコールを無毒化するための時間が長くなると、アルコールが分解される過程でできる毒性の強いアセトアルデヒドがからだに残った状態となり、頭痛や胃痛、吐き気をもよおすこともあります。この不快な症状が「二日酔い」です。


単純に考えて、お酒の量が2倍になると処理時間も2倍になり、3倍になると処理時間も3倍になります。多量飲酒や夜遅くまでの深酒は、肝臓に長時間労働や深夜残業をさせている、ブラック企業なのです!



ブラック企業で訴えられないために

お酒は適量を心がけましょう

お酒は、楽しい気持ちを増加させ、緊張感の緩和やストレス解消の効果もあります。また、適量の飲酒は心臓病予防やHDL(善玉)コレステロール増加に効果があるなど、科学的根拠に基づいた研究発表がいくつもあります。


「酒は百薬の長」は決して迷信などではありません。あくまで、多量飲酒や無理な飲み方がお酒をブラックなものにしているのです。

そこで、守っていただきたいのは労働基準法ならぬ、「お酒の適量」になります。厚生労働省の示す指標では、節度ある適度な飲酒は1日平均純アルコールで20g程度の飲酒といわれています。

お酒の種類別に純アルコール20g相当の目安量を表1にまとめましたので、参考にしてください。

お酒の適量の目安量(表1)

お酒の種類 アルコール度数の目安(※) 純アルコール20gの目安量
ビール 5度 中瓶1本 500ml
ワイン 13度 グラス2杯 200ml
日本酒 15度 1合 180ml
焼酎 25度 カップ1/2 100ml
ウイスキー 40度 ダブル1杯 60ml

※アルコール度数はメーカーや製品によって異なります。
作図:タニタ

日々働いてくれている肝臓にも休日をあげましょう

ただし、女性や高齢者、飲酒後にフラッシング反応(ビールコップ1杯程度で起こす顔面紅潮・吐き気・動悸・眠気・頭痛など)を起こす人は、これより飲酒量を少なくすべきであると推奨されています。


先ほどの例にありましたビール中瓶1本の純アルコール量が20gでしたよね。ということは、60kgの人のお酒の適量は「駆けつけ」や「乾杯」のビール1杯なのです。お酒の好きな方は「えーっ!?」と思われるかもしれませんが、これは肝臓の労働時間をマネジメントする上で必要なことなのです。


また、従業員に休日を与えない企業は考えられませんよね。もちろん、肝臓にも休日は必要です。週休2日+祝日分くらいの年間休日数を確保したいところですが、まずは週1日からでもよいので、肝臓に休日をあげてください。

肝臓の働き方改革を推進し、からだの「健康優良企業」経営者を目指しましょう!


 

【参考資料】


 
※本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。このため、時間の経過あるいは後発的なさまざまな事象によって、内容が予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。